ハムスターと歩む人生は 薔薇色 瑠璃色 きなこ色


by hamstershouse
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シロクマの散り際

シロクマは急変して以後、緩慢に弱っていきました。

急激に悪くなるわけではなく、かといって良い兆候はなく、老いのもたらす自然の結論へと向かって歩いているのが、わかりすぎるほどわかる状態でした。

わたしは自分と他の家族の日常生活に不便がでないようにしながら、シロクマを生かすことに多くの力を注ぎました。たくさんの労力と気持ちを注いでも、報われるものが見えてこない生活は、わたしの精神を侵食していきました。これがハムスターを飼う最後の責任なのだということを、痛いほど噛みしめていました。

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4/27 大好物の食パンをがんばって食べようとしている


GW後半は雨がちになるからということで、GW前半最終日の今日は、いろんなことに追われていました。

洗濯物や布団をたくさん干したり、庭の草木を手入れしたり、掃除をしたり、などなど。

そんな中、頻回にエンシュアリキッドの強制給餌を行いながら、合間の時間にシロクマのケージを通りかかるたびに、様子を伺っていました。

「まだ…息がある。」

シロクマが生きていることにほっとしながらも、先の見えない苦しみの道のりを歩んでいるシロクマのことが不憫で、重すぎる生を負い、まだ歩き続けなければならない彼を見ているしかできない自分に絶望してもいました。

シロクマのために、床暖房を入れて、夜間には空調も入れていたのに、ほんの少しずつ彼の体の芯が冷たさを帯びてきます。

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4/30 正午ごろ いきだおれのように体を横にしている

口呼吸をするようになってもう長く、いつ見てもシロクマは苦しそうです。だからといって酸素吸入を長時間行うとなけなしの力を振り絞って逃げようとするので、よけいに疲れさせてしまいます。だからせいぜい強制給餌前後くらいにしかできません。

シロクマは、こんなになってもトイレに這うように行っておしっこをしています。

「もういいよ、歩かなくていいから、そこでしなよ!」

結局シロクマはじいちゃんになってとことん弱っても、ウンチさえ自力で出すことができなくなっても(最期の頃はわたしがウンチをひっぱりだしていました)、一切おしっこの失敗をすることはありませんでした。

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4/30 午後2時過ぎ

餌皿に顔を突っ込んでいるシロクマを抱き起こしてぎょっとしました。ふさがっていた右目の下に貯まっていた膿が、一気に吹き出して顔中膿だらけになっていたのです。一瞬エンシュアリキッドを嘔吐したのかと思ったくらいでした。

どろどろの顔を拭きながら、久々に開いた濁りかけの右目を見つめて、わたしは途方に暮れました。生きるというのは、ここまでしなければならないのか、と。

それでもシロクマは給餌と酸素吸入をするとほんのすこし元気を取り戻し、まだまだ生を燃焼させ続けます。わたしがわたしたうどんを食べようと一所懸命になっていました。

もう万が一にも元の体には戻らないでしょう。シロクマはそのことを知っているのかいないのかわかりませんけれども、彼なりに今の自分を受け入れているのはわかりました。


「もう長くない」というのは、この介護生活がはじまってからわたしにはすぐわかったことでした。けれども、シロクマはがんばってがんばってがんばり続けていました。だから、この生活が終わる日が来ることが、わたしは気持ちの上で理解はできていなかったようです。

午後7時半、亭主殿が息絶えているシロクマを見つけました。まだ体は温かで、死後硬直もありませんでしたので、発見される直前に亡くなっていたのでしょう。

ボロボロのよれよれの姿で、前のめりに倒れていたシロクマ。最後まで生きることに全力投球の野郎でした。

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おわかれ

わたしがシロクマの顔や体を綺麗に拭いて、長くなりすぎた歯(強制給餌で長く生き延びたので、固い者を食べてない分伸びちゃったんでしょう)を切ったりしている時間に、亭主殿はシロクマに手向ける庭の花を集めてまわりました。色とりどりに咲く花々で、彼の体をつつみます。

シロクマに持たせる食料には、庭で採れるブロッコリーと、シロクマが最期の日まで食べ続けた大好きなリンゴをたっぷりもたせました。


「わたしはシロクマを長く生かしすぎてしまったのかな。それがシロクマにとってラッキーだったとは思えない。でも、見殺しにはできなかった。動物は苦しくても自殺するなんて考えも付かず、ただ生きることしかできない。シロクマをここまで生かし続けた自分が正しいとは到底思えない。」

へたりこんでいたわたしに、亭主殿は言いました。

「でも、シロクマは前向きに頑張っていたんだ。シロクマってもともとガッツのあるヤツだったよ。生きるって命の限り前に向いて歩くこと。人間だって結局は同じことで、命あるかぎり前を向いて生きなきゃいけないんだよ。」


シロクマは倒れてから面倒見ていた時期が長くて、彼の快活な頃の姿が今は思い浮かびません。パソコンに登っていた壮年時代や、わが家に来た頃の丸々した子ども時代が、遠すぎて現実味を帯びてきません。

もうシロクマの世話をしなくていいわたしは、体はラクになりました。精神的にも解放されたはずでした。けれども、なにか心の中に後悔にも似た重さを引きずっている自分がいます。

シロクマが心おきなく旅立てるように、笑顔で見送ってあげられるように、はやく元気にならなくっちゃと思うんですけれど、人間にはやっかいな感情ってものがあって、そう簡単に切り替えられないもののようです。

シロクマを埋葬して、しょんぼりしていたわたしたち人間の気配を察してか、それまではしゃいで暴れていた犬たちは急にし~んとしずかになりました。逢ったこともないハムスターの死がわかったのでしょうか。

残された者のためにも、わたしは快活なメシ係に戻らないといけないですね。


いままでシロクマを応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。シロクマは、ハムスターながらに天晴れな最期でした。彼は2歳4ヶ月の天寿を十分に全うしていきました。

わたしはシロクマのような見事な生き方をする自信はありません。ハムスターには、いつも教わることばかりです。
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by hamstershouse | 2007-04-30 23:52 | ちんくまども